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奈良高1放火殺人についての個人的メモ。



なんだか人事でなくて・・・胸が痛い。




奈良高1放火殺人:事件後長男と初面会 父親の医師が手記
奈良県田原本町で母や弟妹を死亡させたとして高1の長男(16)が殺人と現住建造物等放火の非行事実で家裁送致された事件で、父親の医師(47)が2日、事件後初めて長男と面会した際のやりとりを公表した。付添人弁護士に先月13日の面会の様子を伝えるため作成したメモで、弁護士を通じて明らかにされた。

奈良県警や地検は、父親の暴力も交えた厳しい指導への反発が長男の動機と見ている。このメモには、父親が暴力をふるったことをわび、「死ぬまで一緒に罪を償うつもり」と語りかけ、長男が泣きじゃくりながら反省の言葉で応えた様子が記されている。




弁護士様

お世話になっています。7月13日、事件後、初めて(長男)Aに面会してきました。その時の様子を報告します。

まず、会ってすぐ、Aは直立して、「ごめんなさい」と謝ってくれました。話の途中からは、泣きじゃくって謝ってくれました。Aはやはり表現、言葉も顔の表情もうまくだせないようです。
事件を起こしたときも、捕まった後も、人生をほかしている様な感じです。捕まった後、何をしてももう一緒、もし外に出てもパパにしかられるし、自分は外ではもう生きられないと、自分から望みを絶ったのかもしれません。でも、しっかり反省していました。
面会の後、鑑別所の職員が「まだ1日見ただけですが、お父さんの前で、急に子供らしい感情表現をしましたね」と言っていました。
Aは父である私の愛情に非常に飢えている様子です。また、友達の友情にも心を動かされるようでした。私はできるだけ頻回にAに会って、少しでも心を開かせたいと思います。




 大まかな話の内容です。参考までに。

 私「パパが悪かった。おまえに度々暴力をふるって悪かった。家にいてもずっとパパに監視されていて、家にいるのが辛(つら)かったやろ」

 A:黙ってうなずく。

 私「暴力ふるったパパを許してくれ」

 A:うなずき、少し涙。

 私「今、何か困っているものあるか? 何でも言いや。服のサイズはあれで合っているか?」

 A:「サイズは合っているし、今は、何も欲しい物はない」

 私「ママも弟も妹も死んでしまった。自分が何をしたかわかるやろ」

 A:「ごめんなさい」泣きながら謝る。

 私「3人とももう帰ってこない。罪を償わなければならない。原因をつくったパパも罪を償う」

 A:「ごめんなさい」泣きじゃくりながら謝る。

 私「Aが牢屋(ろうや)に入っていることだけでは償いにはならない、とパパは思う。それは法律上の償いでしかない。3人への本当の償いは、A自身がちゃんと更生し、人生をもう一度やり直すことが本当の償いだと、パパは思う。Aも自分でどうしたら3人に謝れるのか、罪を償えるのか考えてほしい。Aが出てきても、もうパパは勉強しろと言わない。パパは、死ぬまで、Aと一緒になって、罪を背負って生きていくつもりやし、できうる限り、Aをサポートする。けど、A自身が、自分で考え自分で道を決めていかなければならない。ゆっくり考えなさい。自分で考える道を歩むためには、まず、今現在どうすればよいかを考えなさい。まず、今は一層反省して謝罪をすること。それが償いのはじまりや」

 A:泣きじゃくりながら聞いていた。

 私「Aは友達多かったということを、今回の事件後良く分かった。みんなAのこと思って、嘆願書を書いたり、手紙くれたりしたよ。(友人の)B君本人と、B君のお母さんがパパに直接メールくれたよ。B君『Aは何があっても一生の親友です』お母さん『Aが京都から帰ってくるとき、Bと(友人の)C君がAを迎えに行くと言って警察まで行き、Aが帰ってきても、少しでもAのそばにいたいと言って、雨の中夜遅くまで警察の前で立っていた』そうや。パパより遥(はる)かに友達多い。みんな待ってるで。Aが更生して出てくることを。親友の為(ため)にも頑張らないとあかん」

 A:一層、強く泣き出す。

 私「もし、Aが20歳以上なら、3人死亡しているので間違いなく死刑。しかし、Aは16歳だから、少年法で裁かれる。少年法は将来のある子供を少しでも更生させようとする法律や。パパは、Aがもう一度やり直せる可能性があると信じてる。おまえはまだ若いから、まだまだやり直せる」

 A:泣きじゃくりながら聞いている。

 私「Aは俺(おれ)そっくりなんや。おれの悪い癖そっくり受け継いでいるんや。だからパパにはおまえが何を考えているかよくわかる。でもな、他の人には全くわからへんで。今は涙もろくなったけれど、パパは、心の内を表情に出さないのや。学生の時、先生に怒られたら、必ず言われた。何笑っているんや。叱(しか)られているのに何をにたにたしているんや。とさらに先生にしかられた。自分では何も笑っていないし、先生を馬鹿にしているわけではない。反省しているのに、そんな表情しか出せなかった。Aも同じや。おまえ、パパに似て口下手やろ。おべんちゃらなんて絶対言えない。でもな、警察でも調書取られたやろ。口に出して言わないと、調書に書いてもらわれないんやで。わかるやろ。心の中でどんなに反省してても、口に出して言わないと他の人はわかってくれないよ」

 私「3人に対し、今はどう思ってるんや」

 A:泣きながら、「ごめんなさい。ほんとにひどいことしてしまったと思ってる。僕の代わりに、毎日花供えたって」

 私「わかった」

 私「X(地名)のおじいさん、おばあさん、わかっていると思うけどAとは血がつながっていない、でも、こんな事件を起こしても、おまえのこと孫やと言うてくれているで。夏、山登りに連れて行って欲しかったんやろ。毎年、鮎(あゆ)つりや山菜取りに行きたかったが、パパが許さなかったんや。もっとXに遊びに行きたかったんやろ。パパが悪い、おまえの楽しみを全(すべ)て取り上げていたんや。ごめん」

 私が職員に「手紙のやりとりはできますか?」

 職員「できます」

 A:「パパにちゃんと手紙書きます」

 私「パパも出すよ。XとY(地名)の両方のじいちゃん、ばあちゃんに手紙書いたり。安心するよ」

 私「また会いに来ていいか?」

 A:「会いに来てほしい」

 Aは鼻水垂らしてずっと泣いていました。



毎日新聞