往復書簡

NHK BS−2 往復書簡 清張を巡る対話 
松本清張生誕100年記念番組と言う事で何気に録画していたら、あと5分ちゅうところでビデオテープが切れてしまった。
ま、そこまでこだわって見たかった番組でも無いし、まいっか。と思いつつ、ちょっと巻き戻してチェックしていると
え? イッセー尾形Σ(゚Å゚)!?
清張の生誕の地が小倉ということで、小倉の一角にある「文豪堂」という古書店の怪しい老店主役でイッセー氏ご出演。
イッセー氏は子供の頃に小倉にも住んでいたそうなので、小倉弁完璧やし・・・ぬかった。 
しかし、この番組は近来稀に見る秀作だった。
ノンフィクション作家の佐木隆三氏と、作家の高村薫氏が一面識も無い中で、あえて対談ではなく、手紙で清張について
意見を交わす。
ストーリーテラー的に登場する、謎の大学生の青年がバイトするのが文豪堂。 
その青年が清張の足跡(そくせき)を辿って、北九州市内を回るのですが、大林宣彦監督の映画のような、ノスタルジックで
幻想的なドラマ仕立ての回想シーンが、妙に心の原風景を刺激。
かと思えば、老店主のイッセー氏がごそごそと店の奥からポスター(黒革の手帳)を取り出して貼っている。


 

  店主『歴代の清張女優の中では、やっぱ米倉涼子が一番やね』 『いや、新珠三千代のがええかい?』
  青年『新珠三千代・・・ちょっと知らないです;』
  店主『名取裕子わ?』
  青年『いや、それもちょっと・・・』
  店主『どっち? やっぱ米倉やよな(うひひひひ』



みたいなw  てか、米倉の黒革の手帳は、おもいっきりテレビ朝日だしw
あと、青年が若いギャルのお客に
『中居くんの砂の器でのピアニスト役は、後に映画用に多少設定が変えられたんですよ!』とか。
NHKは最近、垣根が無くなってきたねw
しかも、この青年の名前・あだ名・ハンドルネームが「マツケン」というww (今、再度調べたら役名、松木賢介らしい)
なんか色んな意味で、楽しめる素晴らしいドキュメンタリーでした。




しかし、フィルムを通して紹介される我が町は、非常に怪しい歴史と浪漫に満ち溢れているように見える。
他県、遠方の清張ファンなどがこの番組を見たら、無駄に訪れてみたくなる罠的なw
というわけで、清張作品は好きですが、そんなに多く読んだわけではありません。
読んで無いものは、ドラマや映画を先に見てしまっていたりするわけですが、中でも短編「黒地の絵」の紹介には
衝撃を受けた。
1950年(昭和25年)の7月、小倉の米軍キャンプで黒人兵数人の脱走事件があり、住宅地に篭城→捕まるという事件が
実際に起こり、罰として朝鮮戦争の最前線に送りこまれたらしい。 ・・・これは初めて知った。
しかも、7月の祇園祭り・太鼓の音に誘われての脱走事件だった?とかで。
それを清張風にアレンジしているらしいのですが、どこからどこまでが本当で、フィクションなのか?
悪い夢を見ているような衝撃的な空気が、実に恐ろしい。




そんなわけで、松本清張
貧しさゆえに、中卒(ほぼ、小卒かもしれない)で一家を支えた苦労人。
40代で作家になってからも、三島由紀夫などから妨害的なことも受けていたようですが、非常に人間らしい人格者。
自分の中にある鬱屈した感情を、小説の中に投影していたのかな。
それをまた、京大卒のエリート作家に「ひがみ」根性と言われたとか。
それに対し『裕福な京大卒のエリートが、同じようにひがみを描けば純文学と言われるのではないか?』と反論したとか。
・・・心が叩きのめされるように同感。 あるいは癒されるように同感というか。
1992年にこの世を去ったそうですが、梅蘭芳やサラ・ベルナール同様に、お会いしてみたかった有名人の一人です。