宇宙的な恋心?

nekonyao2008-05-24

サラ・ベルナール―運命を誘惑するひとみ

サラ・ベルナール―運命を誘惑するひとみ

 
図書館本。
自伝を、作者との往復書簡という形をとって生涯を紹介。
サラ・ベルナール様、フランソワーズ・サガン様、という風に2人の手紙が交互に紹介されているので、当初本当の手紙かと勘違いしていたが、よく見ると
作者のサガンは1935年生まれの現代人じゃないですか!<サラは1923年没
まぁ、小説なんてものは壮大なる空想と妄想で成りなっているとは思いますが、この書簡形式の構成は凄い。
一歩間違ったら、危ない人の文章!?とも思える感に時々ドン引きしつつ、しかし読む者の心を掴んで話さない文章力で一気に読めた。 サガン恐るべし。 
今度、悲しみよこんにちは。も借りてみよう。




  

というわけで、サラ・ベルナールその名前だけは随分と昔から知っておりました。
何しろ、かのアルフォンス・ミュシャを開花させたのが、サラ・ベルナールからの偶然と必然の出会いによる依頼であったから。
ミュシャ展に行けばいつもサブリミナルのように子供の頃から頭にその名前が刷り込まれておりました。
数年前に、フランス・アールヌーボー?を扱った番組で、少しだけその生涯を見る機会がありましたが、本当に美しい。妖艶。
得も知れぬ、底知れぬ魅力に溢れた女優だと惚れてしまいました。 美は世紀を超える。
しかし、活躍したのが19世紀後半。 日本で言えば、幕末〜明治維新
どんなに世界的に有名な大女優であっても、写真ですら数えるほどしかなく、心掻き乱される魔性めいた偉人。
ああ。 映像の無い時代の、こういう舞台役者の存在というのは考えれば考えるほど、宇宙の果てはどこにあるのか?という永久に答えの出ない
苦しい恋のようで。 私の中では、それが、ニジンスキーとサラ・ベルナール。 ああ。会いたい。会いたい。と、宇宙脳になってしまう。
サラに関しては1900年頃の活動写真にギリギリ間に合って、動くサラを見た事ありますが・・・なんなんだ。この美貌わ!
当時、60歳前後かと思われるのですが、パッと見、20代にしか見えなかった(!)
今回の本にも、56歳で19歳の将校(ナポレオン)を演じた時の写真がありましたが・・・何者なんだ。この若さは!?と絶句。
男装の麗人役も十八番だったようで。 細身で中性的、という意味ではオードリー・ヘップバーンとちょっと似た印象あり。
その美貌と名声と役者魂、そして恐るべき恋愛遍歴には感服。 まぁ、身近にいたらかなり怖いタイプの悪女でもありますけどね;
現代で言えば、森光子(役者魂)と松田聖子(恋愛感)を足した・・・どころの騒ぎじゃない! 足元にも及ばない突き出した大女優。





世界的にそうですが、当時。100〜200年前。 女優は娼婦も兼ねていたそうで。
女優と娼婦が同等。 つまり、常に誰かの愛人であることが普通だったようなので、奔放な恋愛感は当然なのですね。
そもそもサラの母親は、娼館を経営していた娼婦。母の妹も娼婦。 が、娼婦といっても高級娼婦。
その高級っぷりはハンパじゃない。 妹である叔母さんのパトロンは、侯爵。 侯爵つってもまたこれが、ただの侯爵ではなく、
ナポレオン3世の異母弟というから・・・脱帽。 
そして、サラの女優としての才能を最初に気づいたのがこの侯爵!というのは以前から知っておりましたが、今回その詳細が判明!
何かで言い争った時、つまり喧嘩の際のサラの言葉遣い・表現に、この侯爵が感動?したらしい。
元々、サラの父親というのは貴族だか弁護士だかで、非常に地位の高い人だったらしい。
よって、財産分与の親族会議で・・・色々と揉めた際に幼少期をずっと修道院で育ったサラがキレて、

「おいで! きていいのよ!! みんな来ていいのよ! おぞましい年寄りも、怖い人も(一部省略)、馬鹿も白痴も化け物もみんなおいで!
来て好きなようにすればいい。私の体も心ももてあそべばいい。私を辱めにくればいい。川に投げ込んでくれればいい。そうすれば全てが終わるんだから!」

なるほど。 演劇めいているというか、知らず知らずにドラマチックな物言いをする人なのですな。
まぁ、これは余程の美貌・才能・運を備えた人でないと通用しない雰囲気ですけどねw





この本に、テオドラ妃を演じた時の写真もあった。解説に「サラがテオドラを演じれば、パリはビザンチン趣味に染まった」と。
その影響力と存在感に、意味も無く感動の涙が出そうな勢い。 死してなお、影響力ありすぎですよ。
というわけで、その後71歳で片足切断するも、79歳死の間際まで舞台に立ち続けたというのは今回初めて知った。
・・・ふと、エレノア・ベーカー(テリュース・グランチェスター(キャンディ・キャンディ)のママン)は、サラ・ベルナールがモデルかな?と思ったりw
俳優・女優・役者が舞台で死にたい。死ぬまで現役つうのは、いつの世も同じですね。
あー。サラ・ベルナールの写真集とか出ないかなー・・・と、宇宙的妄想が止まらない今日この頃。