風と木の詩を語る猫

 
風と木の詩を初めて読んだのは、12歳の頃。(小6の春休み)
元々、SF 地球(テラ)へ・・・の映画化で、絵も作家名も知っていたので、
何気に本屋で手に取り立ち読みしたのが始まり。
何の免疫も無い、同性愛など見たことも聞いた事も、存在すら知らない時に
目に飛び込んできたコミックス第一巻の冒頭シーン。 
「こ・れ・は・な・ん・だっ ( Д ) ..._。..._。」 一瞬、頭真っ白
しかし・・・なぜか何の違和感なく、その世界へ旅立って行ったのでした。 
さようなら12歳の無垢?な自分。
ぬこ太、耽美道への華麗なる幕開け\(^o^)/


それから、15歳くらいまでハマって読んでいたのかな。 
その合間に王家の紋章日出処の天子エロイカより愛をこめて摩利と新吾エイリアン通り に同時進行でハマっていたので、
当時の自分の中ではそれほど風と木の詩は比重を占めていなかった気もしますが、やっぱり衝撃的な斬新さでは右に出る作品は
他に無いと思います。




という訳で、文庫で買いなおしたので、コミックスを誰か興味ある人に譲りたいと常々考えておりました。
それがこの度、まだ訪れた事も無い遠い遠い東北の、とある街に里子に旅立ちまして、それをキッカケに読み直してみたのですが・・・
現在、茫然自失的な状態に陥っております。
当然、全巻読んだ事はあるのですが、何しろ最後に読んだのが中学生の頃なので、大まかなポイント以外は8〜9割完全に展開が
忘却の彼方でして、まるで初めて読む作品状態で、何度も心打たれ(ていうか打ちのめされ)、感動通りこして号泣し・・・
降参ってレベルじゃない。 そこにあるのは、我が魂の死(と再生)かもしれない。
そんな訳で、これ程までに壮大かつ耽美な世界観を創り上げた竹宮惠子先生に、今更ながら畏敬の念を抱かずにはいられません。神。

19世紀後半のフランスが舞台。 
時代設定的にも、個人的に興味をそそられる。(日本の幕末しかり)
セルジュの両親の話とか良い話だったな〜・・・という記憶はあったのですが、改めて読むと、凄すぎ&感動すぎて言葉になりません。
中学生でも、それなりに感動していたとは思いますが、やはり現在読むのとでは180度見方が違いますね。
何しろ当時は、この作品を読んで泣いた記憶が無い!という事がショックつうか、心底情けない!と中学生の自分を小一時間
問い詰めたいw (そういう意味で言うと、ワシのこの馬鹿げた人生経験も無駄では無かったって事か?w) 




今読み直して見ると、ここ数年ニュースで取沙汰される虐待の連鎖的な物を30年以上前にテーマにしている事に驚いたり。
そういう意味で言うと、諸悪の根源のオーギュストも悲劇的な被害者で切ない事この上ないし、ジルベールの空虚な目や思考が、
なぜか現在の自分と重なって見えたりして、平静に読むのがかなり困難ではありました。
あと、ワシが麻薬を忌み嫌う根底はこの作品の影響もあったのかもしれないなぁ・・・。
人種差別も考えさせられるし、この世の不条理さ・・・むしろ、少年愛がテーマだった事を、ふと忘れてしまいそうになる。
現在の、BLとか腐などと一緒のくくりにしては罰が当たるぞ(゚Д゚;!と思う程のハンパ無い完成度の高さ。




しかし、セルジュの優しさ、真っ直ぐさ、上品さ、強さ(弱さ)どれをとっても完璧で愛さずにはいられない。
ベルサイユのばらのオスカルとはまた違った、優しさと思いやりを学んだ気がします。
しかし、セルジュ父のアスラン(貴族)とジプシー出身の高級娼婦の母の出会いと運命は、こんなロマンチックで感動的な物は
他に無い!!!と言えるくらい、理想の愛の貫き方で、ウットリってか、はひ〜(目がハートw 
・・・良くも悪くも、こんな恐ろしくも壮大な作品を12〜3歳で読んでりゃ、人生狂っちまうよな(´д`)はひーはひー




ていうか、主人公2人の、5歳〜16歳の半生・生涯を描いているのですが、この若さでこれでもか!という血を吐くような
試練は無いよね・・・と、感情移入しすぎて混乱中&鬱状態のワタシ_| ̄|○
でも、パスカルの妹のパトリシアが出てきた時は、同窓生に会ったかのような懐かしさがあったりして、切ない展開の中で唯一
心が和みました。




個人的には、セルジュのその後より、なぜかオーギュストがどういう人生を歩んだのか非常に気になる。ある意味死んだも同然?
あとボナールと弟子の少年とか、パスカルとパトリシア兄妹、カールとセバスチャン兄弟、ワッツ先生、アンジェリン、
描こうと思えば踊る大捜査線のスピンアウト並みに色んな話が出来そうだよなぁw
本当は、もっと先の話まで構想ではあるそうなので、そこでは描かれていたのかなぁ・・・
せめて小説化でもしてくださいぃぃぃ!!!ギリギリギリ←歯軋りw
つうわけで、創作、漫画、物語の枠を超えた神がかった奥行きに乾杯!(泣←感動




ところで、文庫版の最終巻には読んだ事の無い番外編が収録されておりました。 本編ラストから2年後くらいかな。 
18歳になったセルジュも一瞬出てきますが、主役はなんと、ロスマリネとジュール・ド・フィリイ!
あの二人の屈折した関係からは想像もつかない、良い話でして・・・また感動しました。はふはふ♪
戦後民主主義と少女漫画 (PHP新書)
ところで先日、シザンサス氏(久しぶりにフルネーム)からご紹介頂いたこの本は非常にタイムリーでした。
竹宮惠子萩尾望都が、いかにして少年愛をテーマにしたものを描くようになったのか?という考察文があったのですが、
そこで竹宮氏と萩尾氏に多大なる影響を及ぼしたと言われる友人(作家)が、1960年代に発表された稲垣足穂少年愛の美学
という本を二人に紹介した事でこの偉大なる作品を生み出すキッカケになったとかで、なるほどそうか!と個人的な謎が解けた。
というのも、竹宮氏の風と木の詩と、萩尾氏の名作トーマの心臓は、良い意味で根本・テーマが非常に良く似ているのです。
脇役ですがカール・マイセと、ユーリは同一人物と言っても過言で無いし、ユーリとロスマリネも部分的にかぶりますし。
トーマの心臓 1 (フラワーコミックス)
考えて見れば、絵柄・ペンタッチも本当に良い意味で同系。 
どちらも少女漫画家としては異端的ですし、手塚治虫石ノ森章太郎に多大なる影響を受けた感があり、書いている内容は少女漫画
ですが、少女漫画家とは思えないパワフルな感じがします。
どちらも、少年愛的な繊細な物を描きながら、逆のところではハードな名作SFを描く!という点も共通してますしね。
この時代の、いわゆる24年組の作家達が若かりし頃、同じ屋根の下で切磋琢磨(トキワ荘の少女漫画家バージョン大泉サロン)して
いたのは知っておりましたが、こういう素晴らしい相乗効果があったとわ。
そんな流れで、稲垣足穂という大正から昭和にかけて活躍した作家にも興味が芽生え、くだんの少年愛の美学注文してしまった罠。
ま、届いたらまた感想など後日。




ときに、はて? 風と木の詩を里子に出すキッカケは何だったっけ?と思い出してみたら、オリンピックのフィギュアスケート談義から、
男子フィギュアスケートジョニー・ウィアー(先日書いた、薔薇冠の美少年)が、スケート界のジルベール!とワシが言っていたことで、
東北方面の耽美繋がり?のお嬢さんが興味を持ったので、是非に!と強制里子的な流れだったんだw
でも、いま見直してみると・・・ジョニーさんは確かに耽美ですが、やっぱとても健康的で健全な空気ですね。
つうわけで・・・あまりにも病的で不幸なジルベールの美貌に軽く鬱モードだったので、ジョニーさんの健康美に元気づけられて現世?に
戻ってこれた次第でありますw




さて、いつものように何気にググっていたら・・・
まさかのアニメ化Σ( ̄□ ̄;!?ひぃぃぃぃぃぃ

 

しかも、安彦良和監督作品!!!??!!(1987年製作)
・・・でも、さすが安彦氏だけあってクオリティは高い気がしますが、アニメは気恥ずかしくて見れない〜・∵;(ノД`)ノwww